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東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 院試対策 (冬季募集)

東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コースへの進学を検討している人への記事です。

 

※この記事の執筆者は、一橋大学社会学研究科への入学が決まっていたところを、進学までの間に予定していた指導教員からハラスメントを受け、急遽、東京大学大学院学際情報学府を受験したため、通常の募集についてはまったく知りません。

 

東京大学大学院学際情報学府(以下、情報学環あるいは学府)文化・人間情報学コースは、認知科学、美学などを専門に学んでいる学生もいれば、カルチュラル・スタディーズを学んでいる学生もおり、まさに学際的という雰囲気の研究科です。

 

試験のプロセス

 

冬季募集では、研究成果物(卒業論文)、研究計画書、自己推薦書、推薦書、TOEIC/TOEFL/IELTSの証明書が求められ、その書類をもとに選考が行われます。それに合格すると、二次試験は面接になります。

 

推薦書は重要ではなさそう

 

自他ともに推薦書が求められることが、書類審査のうえでの独自性と言えるでしょう。推薦書は、基本的に学部の指導教員に書いてもらうことになります。これについては、最低限のものであれば問題ないありません。しかし、自己推薦書は、学問における能力のようなものについての客観的な基準が存在しないため、書くのに非常に困るでしょう。理系の学生であれば、学部の時に教授や先輩との共同研究などで業績を残している場合もあるでしょうが、文系の学生であれば研究業績を挙げている学部生は稀です。しかし、フィールドワークや統計分析などをゼミ内などで行なっている場合は、その経験をアピールすることも、能力の担保となるでしょう。また、学会によっては、発表でなくても、学部生によるポスターセッションなどを開催しているところがあります。このような場で発表をしている場合は、それを書くことができます。しかし、それでも自己推薦書は書く欄が余ることが予想されます。そこで、抱負をアピールすることも効果的かもしれません。一般的に、院試の面接では、研究への熱意をアピールすることは難しいです。そこで、研究室訪問や書類上でことばにすることが求められます。私は「学際情報学府で学べる日が来ることを楽しみにしています」と締め括りました。就職活動では、「一緒に働きたいと思わせる」ことが重要と言われています。それと同様に、自身がその研究科の院生になっている姿を自然なものとしてイメージする/させることが大切なのではないかと考えています。

 

TOEIC/TOEFL/IELTS証明書もそこまで重要ではなさそう

 

私は冒頭に記述した理由により、TOEFLとIELTSの受験が間に合わなかったので、TOEICで受験しましたが問題ありません(通常募集はTOEICでは受けられないという話を聞きました)。ボーダーラインとしては、留学生の間ではTOEFL90以上(100以上が安全圏)という話があるようですが、そこまで高くなくても問題なさそうです。TOEICで、800以上あれば英語が原因で落とされることはないように見受けられます(私のスコアは885です)。また、評価についても、足切りがあるわけではなく、総合的に行われるので、英語の民間試験の成績が悪くても、研究計画や卒業論文の質が担保されていれば合格できると考えられます。

 

研究成果物(卒業論文)

 

がんばって書きましょう!

 

研究計画書は重要そう!

 

もっとも重視される部分だと考えられます。A4*2枚という指定がありますが、その他の書類が両面印刷だったので私は計4ページ分の研究計画書を書きました。正確には2ページだけ書くべきであると思いますが、書き足りないという気持ちがある場合は4ページ書いても、それが問題になることはありません。しかし、あまり多くを書きすぎると、多忙な大学教員のにとっては読むのが億劫に感じられることもあるようなので、4ページ分書く場合は、余白や文字の大きさなどに気を使って書きましょう。

 

書き方としては、

1. 研究の概要

2. 先行研究

3. 先行研究における問題点

4. 研究の方法

5. 仮説

6. 研究の今後の展望・社会的意義

7. 参考文献

 

という順番が良いかと思います。

 

参考文献については、一橋大学の方の記事でも述べましたが、自身と関わりが深い学術誌の参考文献の書き方に準じるのが最適かと思われます。

 

情報学環は、そのOBの代表的な著作などからなんとなくわかるように、「学環らしさ」がある研究が好まれる傾向にあるように見受けられます。しかし、情報学環は受け持っている学生数が多い教授と少ない教授とで二分されているように思われ(他大学や他研究科もおそらくそうでしょうが)、また、「学環らしさ」があるメディア論、カルチュラル・スタディーズ科学技術社会論ポストコロニアル理論を専門としている著名な教授が多くの学生を抱えています。そのため、必ずしも「学環らしさ」がある研究が院試において好まれているというわけではなく、その分野が単純に人気であると判断するべきかもしれません。

 

とはいえ、研究分野・研究テーマの選定は大切です。「らしさ」に拘らずとも(拘っている人なんていないかもしれませんが)、社会を俯瞰的に見渡したうえで、どのような問題が前景化しているか、そのような問題のなかで議論が満足になされていないものがあるか、などの観点からリサーチクエスチョンを探していくと、新奇性のある問いに出会うことができるかもしれません。私自身の話をすると、私の入試の合否は研究テーマそれ自体で決まったと考えています。私のテーマは雑駁に言って、「空港と人びと」というもので、モビリティという分野からこの議論を追っていくというものですが、モビリティはグローバル化して人びとの移動が増えるなかでも、日本国内ではあまり議論がされることがない分野でした。そして、空港も、研究者はフィールドワークや学会発表などで飛行機に乗る機会があるため、よく使う場所ですが、空港についての議論で著名なものはありません。しかし、空港という場がなんとなく人をわくわくさせる、ということは結構な割合で人が共感するものです。そのため、掴みとして良かったのかなと考えています。もっとも、私自身がそのような考えでこのテーマに至ったわけではなく、私は最初は観光社会学を研究したいと考えていて、イギリスの社会学者ジョン・アーリの『観光のまなざし』や『モビリティーズ』を読んでいたところ、アーリの著作のなかで、フランスの人類学者マルク・オジェの『非場所』が引用されており、それに非常に興味を惹かれ、そのオジェの著作のなかで空港が「非-場所」(人びとが重要視しない場)として取り上げられていて、純粋にその議論に興味を持ったという形でこのテーマに至ったのですが(そのため、卒論と修論はテーマが異なります)。ただ、結果論として、テーマが新奇で、それでいて馴染みがあるものということが評価に影響するひとつの要素として働いたと考えています。

 

また、細かい部分ですが、前述の通り、国内ではこのテーマについてあまり議論がなされていなかったために、参考文献のほとんどが英語のものになりました。そこも、参考文献がすべて日本語であるよりは評価されたポイントだったのかもしれません。ただ、京都大学大学院人間環境学研究科での面接の時、私の卒業論文のなかで引用しているディーン・マキァーネルの"Staged Authenticity"(1973)という論文を指して、「外国語論文もちゃんと読んでいるね」と言われたことがあったのですが、その論文は『ザ・ツーリスト』という著作の一章分として和訳されているものだったので(私は英語で読みましたが)、必ずしも専門ではない分野の文献であれば、詳しくチェックしているわけではないと思われます。

 

面接では何が評価されるのか

 

・研究計画の質

 

情報学環の面接は、少し特殊です。15分間でプレゼンテーションを行います。一般的な学会発表と同じタイムスケジュールですね。それから質疑応答を行なう形です。プレゼンについては、詳しい指定はありませんが、自身の修士課程での研究計画についてプレゼンを行うことになります。基本的にパソコンを持ってきて、発表する人が多いのですが、私はハンドアウトにパワーポイントのファイルを印刷し、それをもとに発表を行いました。プレゼンの方法については、面接官(5人。第5希望まで出願書類に書くことができ、ほぼその時に書いた教授が担当する)の側も特に気にしている様子はありませんでした。

 

私はたった15分なのに、表紙込みで23枚のスライドに詰め込み、早口でまくしたてました。一般的なプレゼンであれば、そういうことは御法度だと思いますが、院試では合否の選別のために後日スライドを見返す可能性があり、その時に情報量が多い方が安心だと、また、早口で発表を行っても、プレゼンの技法より内容が重視される(だろう)院試ではそれがマイナスに働くことがないと考えた結果でした。

 

面接の質疑応答では、自身の研究についてしか聞かれませんでした。たとえば、「『非-場所』という概念について、空港のほかにはどのようなものがあるのか」と聞かれ、「ショッピングモールもそのように捉えられます」と答えると、「では空港とショッピングモールの相違点はなにか」と聞かれたので、「空港でも、消費によって人びとを眩惑させることも重要ですが、あくまでも空港の第一の機能は飛行機に人を誘導して、移動させることにあるので、壁が窓ガラスになっていて陽の動きがわかるようになっています。一方で、ショッピングモールでは消費が第一の機能になるので、人びとを消費にどっぷり浸らせるために外が見えないようになっています」と答えました。これはジェレミー・クールトンというイギリスの社会学者が2014年に提出した博士論文で書いていたことそのままを返したのですが、冷静に考えると、空港の壁も(特にエア・サイド=出国審査後は)窓ガラスになっていないところは多くあるし、外が見えるショッピングモールも多くあるので、少しおかしいのですが。このような修論の内容に関連した質問がほとんどで、ひとつだけ卒論と修論の接続についての質問がありました。簡単に言えば「なぜテーマを変えたのか」ということです。その他、今後の進路などについて聞かれることはまったくなかったので、あくまでも評価基準は「修士論文を書くことができそうか」という一軸だと思います。ここからも、書類審査でも、卒業論文よりも研究計画書の方が重視されるだろうことが推察できます。

 

冬季募集の難易度

 

・割と難しいと思います。

 

通常の夏季募集と冬季募集の内訳を公式で発表していないので、正確な数字はわからないのですが、聞くところによると、冬季募集は10倍くらい倍率があったとのことです(さすがにそこまで高くはないだろう、と個人的には思いましたが)。夏季募集は現在は、院試対策で読むべき本を公式に公開しているので対策が立てやすいという意味で夏季から狙っていった方がいいと思います(逆に言えば、公式に公開されている文献をほぼすべての受験生が抑えてくるために差がつかなくなるかもしれませんが)。